特集:日本代表ZETA DIVISIONが世界ベスト4になるまでの軌跡 〜AbsoluteからZETA DIVISIONまで〜
VCT 2022 - Stage 1 - Masters Reykjavíkでは、日本代表ZETA DIVISIONが韓国代表DRXに勝利しベスト4以上を確定させる歴史的な快挙を達成しました。
DRX VS戦ではZETA DIVISIONに関するハッシュタグが日本のトレンドを総なめし、世界のトレンドランキングでも1位、同時接続数でも本大会最高の66万人を超える視聴者を獲得しています。
次戦のAPAC代表Paper Rexとの戦いに勝利すれば優勝も視野に入るZETA DIVISIONですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。本記事では、今大会での躍進に到るZETA DIVISIONの軌跡を振り返って見ましょう。
Absolute JupiterからZETA DIVISIONへ
ZETA DIVISIONのVALORANT部門のルーツは、CS:GOで日本のトップチームとして活躍していたAbsoluteです。
当時も現在も、CS:GOでは世界大会の上位チームは欧米勢が独占しており、2015年に設立してから日本のトップチームとしていたAbsoluteは、世界大会への出場権を獲得するためにまずアジア大会を勝ち抜く必要がありました。
しかし、日本では無敵のAbsoluteも世界では苦しみます。アジア大会で上位には進むものの、世界レベルには惜しくも届かないという時期が長く続いていました。
上のツイートは当時を象徴するKouji "Laz" Ushida選手のTweetです。当時のAbsoluteには、今もZETA DIVISIONに所属するKouji "Laz" Ushida選手、Maruoka "crow" Tomoaki選手、Sawada "JUNiOR" Yuyaコーチに加えて、Oshiro "Reita" Ryu選手、Shogo "takej" Takemori選手、Ryo "barce" Takebayashi選手が所属していました。2019年のアジア大会ベスト4進出を決定した戦いを振り返るこのツイートには4月21日時点で165のLikeが付いています。
このLike数が少ないものとは決して言えませんが、先日行われたDRX VS戦での勝利に関する次のツイートへのLikeが4月21日時点で79600以上付いていることを考えると、当時と現在の注目度の違いがうかがえます。実際、当時の日本のCS:GOシーンは決して今のように盛り上がっているとは言えない状況でした。
なお、当時勝利した韓国代表MVP PKには、奇しくも先日ベスト4を賭けて勝利したDRX VSに所属するKim "stax" Gu-taek選手、Goo "Rb" Sang-Min選手、Pyeon "termi" Seon-hoコーチが所属していました。
VALORANTへの転向とVCT 2021での挫折
Absoluteは2020年3月にCS:GOからVALORANTへ移行することを発表し、それと同時にJupiterと契約します。多くの国内FPSプレイヤーからの期待に応え、Absolute Jupiterは初の公式大会であるFirst Strike Japan Regional Finalで優勝を飾ります。また、Hibiki "XQQ" Motoyamaをコーチとして、gya9をアナリストとして迎えチームとしての体制を盤石なものにします。
しかし、VCT 2021 - Stage 1 - Japan MastersではByeon "Munchkin" Sang-beom選手を擁するCrazy Raccoonに決勝で負けてしまいます。続くVCT 2021 - Stage 2 - Japan - Challengers FinalsでもCrazy Raccoonに決勝で負けて世界大会進出を逃すことになったAbsolute Jupiterは、2021年7月にZETA DIVISIONへとリブランディングを行います。
リブランディング直後の大会であるVCT 2021 - Stage 3 - Japan - Challengers Playoffsでは若手のMiyamoto "makiba7" Akastuki選手を補強したこともあり見事優勝を果たし、VALORANTでの初めての世界大会進出を決定しました。
大きな期待を背負って世界大会へと挑んだZETA DIVISIONでしたが、しかし、ベルリンで開催されたMastersでは1勝もできずに帰国することとなります。同じく日本代表として出場していたCrazy RaccoonはVCT 2021 - Stage 3 - Masters Berlin - Group Stageで日本勢として初の勝利を達成するものの、その後開催されたVCT 2021 - VALORANT Champions 2021では1勝もできずに敗退します。
これらの結果によって、世界からの日本地域、日本代表への評価は決して高いとは言えないものとなっていました。
メンバー刷新とVCT 2022 Japanでの無敗優勝、Mastersへ
ZETA DIVISIONはVCT 2021 - VALORANT Champions 2021出場の権利を得るためのVCT 2021 - APAC Last Chance Qualifierへの不参加を発表していました。その理由を「世界で戦えるチーム」になるためと説明していたZETA DIVISIONは、2021年12月、Absolute時代からの所属選手を入れ替える決断をします。新たに加わったのは国内で台頭していた若手のShota "SugarZ3ro" Watanabe選手(元NORTHEPTION)、Tenta "ten" Asai選手(元NORTHEPTION)、そしてYuma "Dep" Hisamoto選手(元REJECT)でした。
その決断の結果は、VCT 2022 - Japan - Stage 1 - Challengers Playoffsでの圧倒的な無敗優勝でした。この結果に、国内ファンからの世界大会での活躍への期待は一気に高まります。
その一方で、世界のアナリストやキャスター間での下馬評ではZETA DIVISIONの最下位を予想する声も多くありました。VCT 2022 - Stage 1 - Masters ReykjavíkでZETA DIVISIONがどこまで到達できるのか。そもそも1勝でもできるのか。国内ファンは期待と不安が入り混じった目でMastersを観戦することとなります。
Mastersでの歴史的な快進撃
VCT 2022 Masters Day 1: vs DRX VS
大会初日のマッチとなった第1試合目は、奇しくもCS:GO時代からの因縁のある韓国代表DRX VSでした。韓国国内で圧倒的な強さを誇るDRX VS相手に新生ZETA DIVISIONがどこまで通用するか注目を集めた1戦でしたが、ここでZETA DIVISIONは2マップ合計で取得ラウンドが5ラウンドのみ、26-5という圧倒的なスコアで負けてしまいます。
VCT 2022 Masters Day 3: vs Fnatic
もう後がないZETA DIVISIONはEMEA代表のFnaticと対戦することになります。なお、Absoluteは2017年にCS:GOの国際大会で当時優勝候補だったFnaticを相手に14-16の接戦を繰り広げています。
Fnaticは直前に2名の選手の入れ替えをしており万全の状態ではなかったものの、ZETA DIVISIONはヨーロッパの古豪を相手に2-0のストレートで勝利することとなります。2017年当時とメンバーは違えども、Laz選手とcrow選手にとってはAbsolute時代の雪辱を果たした一戦ともなりました。
VCT 2022 Masters Day 4: vs Ninjas in Pyjamas
この戦いに勝利すればベスト8、プレイオフ進出という重要な1戦はブラジル代表のNIPでした。激戦区のブラジルで2位となった強敵相手でしたが、緻密な連携と高い個人技、そして相手の研究、全てを高い完成度で準備していたZETA DIVISIONは2-1で勝利します。
VCT 2022 Masters Day 5: vs G2 Esports
前夜の快挙から連戦が続くZETA DIVISIONは、プレーオフ第1戦でEMEA代表のG2と対戦します。G2側の巧みなゲーム運びに加え連戦の疲労もあったZETA DIVISIONは結果的には2マップを連取され負けてしまいましたが、内容は一歩も劣っておらず、次の試合に向けて希望を残すこととなります。
VCT 2022 Masters Day 7: vs Team Liquid
1日の休みを置いて、再び後が無いZETA DIVISIONの相手はまたしてもEMEA代表のTeam Liquidでした。強力なフィジカルを誇るTeam Liquid相手にZETA DIVISIONは一歩も引かず、2-1で勝利します。
本試合でも同様でしたが、大会を通じて、新加入の若手であるSugarZ3ro選手、TENNN選手、Dep選手の活躍が目立ちます。そこをサポートするLaz選手とcrow選手という構図は、これまで世界大会ではLaz選手の切り開く力が際立っていたZETA DIVISIONと対照的であり、新たなZETA DIVISIONを象徴する試合となりました。
VCT 2022 Masters Day 9: vs DRX VS
ベスト4決定戦は、DRX VSとの運命の再戦となります。厳しい敗北となった初戦のリベンジが期待されたZETA DIVISIONは、DRX VSの戦術に対するカウンターを完璧に準備していました。第3マップのSplitではDRX VSに4ラウンドしか取られない立ち回りを見せ、2-1で雪辱を果たすこととなりました。
いま、世界ベスト4という輝かしい位置にいるZETA DIVISIONですが、チームとして、そしてLaz選手やcrow選手らAbsolute時代から所属する選手たちのeスポーツ選手としての道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
一度きりの奇跡ではなく、これからの日本eスポーツの歴史をまさに作っている本大会でのZETA DIVISIONがこれからどのような軌跡を描いていくのか、日本中のeスポーツプレイヤーが注目しています。
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