国内プロチームVALORANT部門が次々と解散。浮き彫りになる現在の大会システムの問題点

執筆者 Kei Japan Writer
最終更新日April 1, 2023 at 01:46AM
シェア
シェア

3月23日、VCT 2023 - Challengers League Japan - Split 2 - Open Qualifierが終了して以降、多くの国内プロチームがVALORANT部門の解散、休止を発表しています。本記事では、現在のVCTシステムが作り出す問題点、そしてプロチーム、選手に及ぼす影響について言及していきます。

国内プロチームFIRST Gamingが3月26日、VALORANT部門全選手、スタッフの脱退を発表しました。FIRST Gamingだけではなく、EVA:eGood 8 Squadを始めとする国内プロチームも続々と解散、休止を発表しています。

原因

なぜこのような現象が起こるのでしょうか?まずは2023年から大きくシステムが変わった「VALORANT Champions Tour(VCT)」の仕組みを確認しましょう。ゲーム内コンペティティブシステムに関しては、2024年以降に実装予定なので、本記事では触れません。

第一にVALORANTのプロチームは大きく2つに分類できます。

  • インターナショナルリーグに出場することのできる、パートナーチーム
  • インターナショナルリーグ出場を目指す、その他のチーム

国内プロチームでパートナーチームとなっているのはZETA DIVISIONDetonatioN FocusMeのみ。この2つのチームはRiot Gamesより支援を受けながら、長きにわたるリーグ戦をプレイするので解散とは無縁です。ではこの2チーム以外の国内チームの2023年のスケジュールはどうなっているのでしょうか?

  1. VCJ 2023 Split 1 (Split 2でのオープン予選やアドバンスステージ免除をかけて争う)
  2. VCJ 2023 Split 2 オープン予選 (64チームが出場) 3月21日~23日
  3. VCJ 2023 Split 2 アドバンスステージ (12チームが出場) 3月28日~31日
  4. VCJ 2023 Split 2 メインステージ (8チームが出場) 4月13日~6月4日
  5. VCT 2023 アセンションリーグ(VCJ 2023 Split 2 優勝1チームのみ出場) 7月開催予定
  6. サードパーティーが企画する大会 (詳細不明) 9月~12月

パートナーチーム以外は、VCJ 2023 Split 1、そしてSplit2の大会に出場することとなります。Split 1にて上位の成績を残したチームは、オープン予選やアドバンスステージをスキップし、国内TOP8が争うSplit 2メインステージの出場権を手にします。Split 1にて良い成績を残せなかったチームは、Split 2オープン予選に出場し、アドバンスステージ、メインステージの順に勝ち上がります。そしてSplit 2メインステージにて優勝を果たしたチームは、インターナショナルリーグ出場をかけたアセンションリーグにて、同じように各国の大会で優勝したチームらと争います。

記事執筆時4月1日時点では、Split 2 アドバンスステージが終了し、メインステージに出場する8チームが決定しました。しかし逆に言うと、この8チーム以外のチームが出場できる大会は、現時点では一つも予定されていないのです。Twitter等でプロプレイヤーが「負けたら2023年終わり」と呟いているのを見た方ならわかるかもしれませんが、Split 2からの敗退=2023年の大会の終了であり、半年以上大会に出場できないことを意味するのです。

大会がないことが及ぼす影響

Eスポーツ企業

まず大前提として、多くのEスポーツ企業の経営はカツカツです。そしてEスポーツ企業の問題点を把握するために、企業の収入源をまとめてみましょう。

  • スポンサーからの支援
  • グッズ販売(服など)
  • 大会賞金(契約による)

もちろんビジネスモデルはチームごとに異なりますが、多くのチームはこのような形で収益を得て、それを運営費、選手やスタッフの給料に充てています。選手たちはスポンサーのロゴが入ったユニフォームを着て大会に出場し、スポンサーから提供されたデバイスを使用して大会にてプレイし、大会で活躍してグッズを買ってくれるファンを増やし、契約によっては大会で得た賞金を企業と選手で分配する。まさに大会があるからこそ運営を続けられるのです。企業側も工夫を凝らし、イベントの開催や配信活動に力を入れるチームも現れていますが、選手が活躍する場がないと成り立たないのはどこのチームも同じです。そして大会に出場できない最低チーム6人(選手5人+コーチ)の給料を2024年まで、もしくは2023年9月に開催予定の詳細が明らかにされていないサードパーティー大会まで払い続ける選択をできるほど潤っているチームは多くありません。結果として数多くのチームがVALORANT部門の解散、放出を発表しています。

プレイヤー

もちろん問題はプレイヤーにも降りかかります。まず第一に基本的にプロプレイヤーの選手生命は非常に短いです。10年以上プロでい続けられるのはプロの中でもほんの一握り。多くのプレイヤーが数年でキャリアを終える現状で、半年以上試合に出られない期間が生まれるのは大きなダメージです。なによりフルタイムでプレイしていた選手たちは、チームの解散に伴って無職になってしまいます。当然この時期にVALORANT部門を設立したり、新規メンバーを募集するチームは多くありませんので、必然的に選手たちは次の大会、もしくは2024年シーズンが始まるまでの間は別の仕事をこなしながらVALORNTをプレイする事になってしまいます。そうなるとフルタイムで活動することのできる一部の選手との差は広がるばかりであり、国内シーンの成長に繋がりません。

また、大会を通じてファンを獲得するのはチームだけでなく、選手にも通じることです。Ilya "something" PetrovInsomnia 所属時に国内シーンを驚かせた直後、彼のTwitterのフォロワーが大幅に増加したのを覚えているファンも多いのではないでしょうか?ファンが多い選手は引退後にストリーマーに転向するチャンスが残されていますが、ファン獲得に一番必要なものが失われたVALORANTシーンにて人気を博すのは至難の業でしょう。

数々のプロチームが参入し、国内のfpsゲームでは一番と言っていいほどの盛り上がりを見せるVALORANT。その成功の裏に潜む問題にどう向き合っていくかに注目が集まります。

THESPIKE.GGライター。

更に表示

最新ニュース

コメント

コメントするにはログインしてください
ログイン

Top Predictors

ユーザー名
ポイント

最新アクティビティ

THESPIKE
© 2024 THESPIKE.GG | 無断複製・転用禁止 | Riot Gamesとは関係ありません
18歳以上限定、責任あるベッティング | BeGambleAware.org